美容師と理容師の違いとは? 資格内容やダブルライセンス取得方法を紹介

理容師と美容師の違いを説明

理容師と美容師、2つの職種の違いを知っていますか?

「サインポール」と呼ばれる赤・白・青の縞模様が回転する円柱形の看板を見たことがある人も多いのではないでしょうか。理容室が営業中であることを示す世界共通マークで、日本では「散髪屋」「床屋さん」とも呼ばれます。現在、美容師は理容師の約2.4倍も多く、理容美容専門学校においても理容師を志すより美容師を目指す学生の方が圧倒的に多いのが現状です。

理容師と美容師どちらもがヘアカットをメインとする職業ですが、それぞれの役割や業務内容を定めた法律「美容師法」「理容師法」があります。

理容師法の定義

「理容とは、頭髪の刈込、顔そり等の方法により、容姿を整えること」
(理容師法第1条の2第1項)

美容師法の定義

「美容とは、パーマネントウェーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすること」
(美容師法第2条第1項)

「顔剃り」ができるかどうか

施術目的として「美しくする」か「整える」のかという違いがあり、美容は「おしゃれ」、理容は「身だしなみ」と考えられています。仕事内容は重なる部分もありますが、大きな違いは「顔剃り」ができるかどうかです。理容師はヘアセットやメイクをおこなうことができません。他方美容師はメイク時に顔のうぶ毛を剃る場合を除き、シェービングをおこなうことはできません。さらに理容師・美容師両方の資格を従業員全員が保持している場合を除き、理容師と美容師が同一のサロンで働くことはできません

最近では、サロンに通うお客様の性別や年代・ニーズの多様化に加え、SNSの発展により、デザイン性の高い技術とセンスが求められています。そのほか、接客に関わるカウンセリング能力、頭皮や毛髪診断、肌の健康管理へのアドバイスなど、日々求められることも進化し多岐にわたります。

美容師と理容師の国家試験の内容の違いと難易度は?

理容師・美容師国家試験の受験資格を得るには、厚生労働大臣の指定する養成施設で「昼間課程(2年以上)」「通信課程(3年以上)」のどちらかを修了する必要があります。

大きな差のひとつに、受験者数が挙げられます。美容師資格の受験者数が1~2万人であるのに対し、理容師の方は1桁少ない1~2千人となっています。春期には理容美容学校の昼間課程卒業生が多く受験し、主に秋期は通信課程の学生が受験します。公益財団法人理容師美容師試験研修センターによると、平均して、美容師の合格率は60%~80%となっていることに対し、理容師の合格率は50%~70%と少し低くなっています。

【近年の受験者数と合格率】

(理容師美容師試験研修センター)

受験科目は筆記と実技になります。筆記試験の内容は、関係法令や美容理論、衛生管理、物理・化学など共通点が多いですが、大きく違うのは、施術の名称や道具の扱い方など専門技術を問う理論の問題です。一方実技試験は、理容と美容で試験課題が全く異なります。安全な衛生上の取り扱いが審査される「衛生試験」と、技能、能力が問われる「基礎的技術試験」が実技試験です。

理容師法と美容師法の最大の目的が「公衆衛生の向上」であることから、両衛生試験ともに清潔な身だしなみや手指の消毒、使用用具の種類など規定内での準備が求められます。つまり基礎的技術試験が合格ラインでも衛生上の取扱いの減点により不合格となってしまうこともあるのです。

理容師の実技試験

理容師の実技試験では、カッティング技術のほか、顔の髭やムダ毛を剃るシェービングの技術が試されます。さらにお客様に施す「整髪」の基礎技術を加えたものが、実技試験の中身となります。

美容師の実技試験

同様にカッティングの試験があり、ロッドなどを頭髪に巻き付ける「ワインディング」、ウェーブをかける「オールウェーブセッティング」の試験が加わります。

美容師・理容師の資格を取得した後に活躍出来る場所

理容・美容に対する関心が高まり、厚生労働省が発表した「平成30年度衛生行政報告例」では、2018年度の理容室数は119,053店舗で前年より1,912店舗減少、従業理容師数も前年より3,067人減少しているようです。これらの要因として、「1000円カット 」などの低価格サービスを提供するチェーン店の増加と競争激化、経営者の高齢化により営業継続が困難となった個人経営サロンの減少などが考えられます。一方、美容室数の推移を見ると右肩上がりに増えているため、成り手が美容業界に流れていることも考えられます。

資格取得後の一般的な就職先は理容室・美容室が多いですが、活躍できる場はそれだけに限りません。地元に根付いた個人経営の小規模サロンから、法人経営の大型サロンやチェーン店、施術スピードが求められる低価格店などさまざまあります。

法人経営サロンの特徴

  • 教育カリキュラムが整っている
  • 店長やマネージャー職への昇進ができる
  • 個人経営サロンに比べて、福利厚生が充実している

個人経営サロンの特徴

  • オーナーのすぐ近くで技術を身につけられる
  • 地域密着型で地元の常連客・リピーターが多い
  • 経営ノウハウを学ぶことができる

大事なことは、自分が「どのような働き方をしたいか」です。また、理容師は『容姿を整える』、美容師は『容姿を美しくする』施術が必要とされる場所で、あらゆるニーズがあるのです。

理容師・美容師の活躍一例

  • 理容室・美容室
  • 結婚式場やホテル
  • 化粧品などメーカー
  • 美容アドバイザー
  • TV・雑誌等マスコミ関係のヘアメイク
  • 福祉関係
  • 理容美容養成施設の講師・教員

その他多数あります。最近では外出が難しい高齢者や障がい者へ在宅・訪問サービスを提供する「ケア理容師」や訪問美容も注目を集めています。理容師免許に加え、「ケア理容師養成研修」を受講し、研修を修了すると「ケア理容師認定証」と店舗掲示用の「ケア理容師マーク」が交付されます。 今後の高齢化社会で、福祉と理容師のスキルをともに取得することによる幅広い方への施術提供がますます必要とされるでしょう。

理容師と美容師のダブルライセンスと取得方法は?

理容師と美容師、2つの資格を取得することを「ダブルライセンス」といいます。美容師がシェービング技術を提供できように理容師免許の取得を目指す、逆に理容の技術に加え、美容の最新ヘアトレンドの発信やまつ毛エクステンションなどのメニューを理容師が提供することでブランド力を高めることも魅力的です。現在ダブルライセンスのほとんどが、理容師が美容師の免許を取るという形のようです。

2018年4月に幅広いニーズに対応できる人材の育成と資格の取得しやすさを主眼とし、制度が改正されました。厚生労働大臣指定の養成施設(美容学校)で、所定のダブルライセンス取得者向けカリキュラムを修了して国家試験に合格する必要があります。これまで2つの学校に通うと単純に倍の費用と年月が必要だったのですが、授業時間や修業期間が約半分に短縮されるといった大きな魅力があります。具体的に、40〜50万円程度の費用で、通常の修学期間である3年を半減した1年6ヶ月で通信課程のカリキュラムを終了できます。昼間課程で片方の勉強、通信課程でもう一方を習得できるといった具合に、短期間で完結するスタイルを採用する学校もあります。

しかし、制度が改正されてから、まだあまり時を経ていないため、「理容と美容」の両方の学科を備えていない専門学校が多いのが実状です。カリキュラムを確認したうえで学校を選び、「最初から両方取得」と意気込む必要はなく、まず片方の資格取得を目指すことをおすすめします。その後、有資格者を対象とした学科を考えても遅くありません。

ダブルライセンスの取得は就職後も仕事の幅が広がる

ダブルライセンスの取得で両方の技術に精通することは、理容室、美容室のどちらでも働くことができ、就職する際には有利となる場合や、就職後も仕事の幅が広がるでしょう。経験を積み開業やフリーランスで活躍するなど、独立した際さまざまなサービスを提供できる強みにもなります。眉毛を整える男性やヒゲを生やす男性の増加から、シェービングは今、価値が上がってきています。理容業界では、他店との差別化をはかるため、高級志向のバーバーや女性向けのシェービングに特化したサロンのニーズも高まっています。オシャレな美容室に通う男性も多い一方で、大人の時間と空間を提供する高級バーバーを好む男性も増えています。

カットだけでなく、毛髪・頭皮のスカルプケア、エステ・パックなどのフェイシャルケア、マッサージやヘッドスパなどは、男女問わず人気のメニューです。理容師の高いシェービング技術を活かし、昨今ではレディースシェービング専門店などシェービングに特化したサロンが存在しています。多くの女性理容師が活躍し「ブライダルシェービング」といったメニューを用意しているサロンもあります。顔そり以外に手の甲やうなじなどむだ毛を綺麗にするのと同時に、フェイシャルマッサージや頭皮マッサージなども行います。

ネイルやエステを始めとし、ヘッドスパやまつげエクステ、資格を必要としない業種リラクゼーションやハンドマッサージなど、その気になれば美容全般に関わる仕事に就くことができます。ヘアカットだけでなく各種リラクゼーションを混合させたサロンでは、それらの知識を勉強して顧客のニーズと自身のスキルをさらに多方面に広げていくことができるでしょう。

まとめ

理容師と美容師の違い、資格の取り方、活躍できる場所、そして業界の今後を占うダブルライセンスについて紹介しました。規制緩和に伴い各々が提供できるサービスの幅も広がり、複合的スキルを持った人材や施術・接客力ともに高い技術を持った人材が必要とされています。また今後ますます複雑化・多様化・高度化していくニーズを満たすために、2つの資格を絡めつつ、理容師は一般的なサービスのほか、エステティックや育毛などの新しいニーズを取り入れること、美容師はヘアスタイルの流行を捉えつつ、ヘッドスパなどリラックス効果も期待できるようなスキルを磨いておくことも大切です。

理容室と美容室の在り方も時代と共に常に変化し続けていく中、現状の働き方や職種の枠に留まらず、自分の興味があること・社会と生活者のニーズがありそうなことに挑戦していきましょう。今後、大きな強みとなり活躍の場をもっと広げることができるはずです

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